(写真=Andrey Tolkachev/Shutterstock.com)
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Business

大企業も利用するクラウドファンディングで企業の将来性は図れるのか

2019.2.5
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もともとベンチャー企業や個人が多く利用していたクラウドファンディングは、最近大手企業も参入するようになりました。新商品開発やマーケティングを目的として行われる大手企業のクラウドファンディングは、そのブランド力の高さから多くの人から注目を集め、資金も集まりやすいという特徴があります。クラウドファンディングの成功は、大企業に何を与えるのでしょうか。

ソニーと東芝によるクラウドファンディングの試み

まずは大手企業が行ったクラウドファンディングの事例を見ていきましょう。

・ソニーのスマートウォッチ「wena wrist」

2015年にクラウドファンディングによる資金調達を行い、最終的に1億円を超える支援を集めて話題になったのがソニーのスマートウォッチ「wena wrist(ウェナリスト)」です。腕時計のバンド部分にスマートウォッチとして必要な機能を内蔵し、自分の腕時計に自由にwena wristを取り付けられるのが特徴です。

クラウドファンディングが大成功を収めた後は一般販売も開始。2019年1月現在、ソニーが運営するクラウドファンディングとEC(エレクトロニック・コマース)を組み合わせたサイト「First Flight」などで販売中です。

・東芝がスタッフ社と共同開発したアルコールチェッカー「TISPY」

飲酒量を計測し続けることでデータを蓄積・学習し、持ち主に飲酒のペースなどをアドバイスしてくれる学習型アルコールチェッカーです。SDカードまたはFlashAir(無線LANを搭載したSDカード)を使てデータを蓄積します。FlashAirを利用することでスマートフォンにデータを転送することも可能です。こちらは1,500万円を超える資金を調達しています。

東芝にとっては初めて取り組む分野での商品開発だったので、クラウドファンディングの活用で適切な生産量を見積もることができたのが魅力だったといいます。また、新しいアイデアがどれだけマーケットで支持されるのかを見極めるためでもあったようです。

クラウドファンディング後のソニーのビジネス展開

大手企業がクラウドファンディングを利用するはしりとなったのが上記のスマートウォッチのプロジェクトでした。2015年に開始されたソニーのプロジェクトは、「大手企業のクラウドファンディング活用成功例」として多くのメディアに取り上げられています。

このプロジェクトが進められたのは、ソニー社内で新規事業創出に取り組むプログラム「Seed Acceleration Program(以下SAP)」のオーディションに選出されたためです。wena wristを企画したのは、入社1年目の社員。学生の頃からのアイデアであったスマートウォッチを具現化できるのはソニーであると考え、入社後SAPに応募。アイデアは見事採用され、ソニーが運営するクラウドファンディングサイトでの販売が決まりました。

ソニーのクラウドファンディングサイトは、wena wristのプロジェクト開始と同時に誕生しています。この時、wena wristの他に2つのプロジェクトが立ち上がっていました。これらも同じくSAPから生まれたものです。「今までのソニーにない事業を創ること」を目的としたこのプログラムは、社内にある熱意とアイデアを素早く具現化し、製品化していきました。

かつては「家電といえばソニー」というほどファンも多く、ブランド力も国内家電メーカーのトップクラスでしたが、リーマン・ショック後から2012年にかけて株価が下落し、2012年には一時819円まで落ち込みました。その後も低迷が続きましたが、2014年9月から徐々に回復の兆しを見せ、クラウドファンディングサイトFirst Flightがリリースされた2015年7月の株価は3,500円を超えました。

ソニーがクラウドファンディングで1億円を超える資金を調達してwena wristを製品化した後、株価は2016年の始めに一時落ち込んだものの、2016年の夏からはほぼ右肩上がりで推移しています。

もちろん、株価の上昇にはこれらの要素に加え、経営を黒字化するための施策がうまく噛み合ったという背景はあるでしょう。それでも、社内から新しい事業を創出するプログラムと実際に進められたプロジェクトの成功は、株価にも少なからず影響を与えたのではないでしょうか。

新規事業を生み出す際、ネックになるのは資金です。クラウドファンディングを利用することで資金をスピーディかつ低コストで調達できます。これは従来のような金融機関からの融資に比べて大きなメリットといえるでしょう。

「クラウドファンディング×大手企業」の将来

ソニーは2018年1月からFirst Flightを含めた新規事業支援を、社内だけでなく他社のスタートアップにも提供を開始しました。クラウドファンディングの利用にとどまらず、成功例をもって他の企業も支援する取り組みは新規ビジネスの創造の枠を超えたものといえそうです。事業をさらに大きく展開していったソニーの例を見ると、「クラウドファンディング×大手企業」には、私たちが想像している以上の将来性が秘められているのかもしれません。

 
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