(写真=Chamelion Studio/Shutterstock.com)
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Culture

伝統工芸品に特化したクラウドファンディングで古き良き伝統の技を残す

2018.12.13
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ジャパングローサーズが、2018年3月に新たなクラウドファンディングサービスを開始しました。その名も「casanell(かさねる)」。日本の伝統工芸品をクローズアップしたこのサービスによって、日本の伝統工芸ファンは、職人や制作にかかわる人を直接応援できるようになりました。職人たちだけでなく、日本の伝統工芸を支えるすべての人を支援できるcasanellとはどのようなサービスなのでしょうか。今日の伝統工芸が抱える問題と、casanellが今後果たしていく役割について考察します。

後継者不足と資金不足。伝統の技を残すために今できること

経済産業省が定める「伝統工芸品」とは、100年以上の歴史を持ち、大部分が手作業で作られる日常生活のための用品で、かつ製造する事業者の規模がある程度保たれ、地域産業として成立していること、と定められています。国内には1,400ほどの伝統的な工芸品があるといわれていますが、経産省の要件に当てはまるのは、2018年の時点でわずか232品目です。例えば、愛知県の尾張仏具、長崎県の長崎べっ甲、沖縄県の南風原花織(はえばるはなおり)などが経産省の伝統工芸品として指定を受けています。

こうした伝統工芸品は、歴史的にも大変に価値のあるものですが、現在、いくつかの問題を抱えています。

後継者不足

日本全体で労働人口が減少していく中で、伝統工芸品を作る職人の数も減少しています。1979年には28万8,000人だった職人の数は、2000年には9万7,000人、2015年には6万5,000人にまで減少しています。職人の高齢化もさることながら、労働人口の減少も職人不足に拍車をかける要因の一つとなっているようです。

販路の問題

伝統工芸品を作る職人はほとんどが個人事業主か中小事業者です。従来から下請けとして工芸品の受注をしていることから、販路の拡大や価格交渉といった面に弱い、という特徴があります。

ブランディング力が弱い

独自のストーリー性を持ち、高品質な作品作りを行っていても、ブランディング力が弱い、情報発信が弱い、という課題があります。

これらの課題を打破すべく、政府側も補助金によって伝統工芸品を守る活動に取り組んでいます。例えば、伝統工芸を産業とするための「伝統的工芸品産業支援補助金」、ブランド力を高めるための「産地ブランド化推進事業」といったものです。また、中小企業庁も、伝統工芸品工房研修や伝統工芸品体験フェアなどを開催し、職人を増やすための活動を行っています。

伝統工芸品を活用した産地観光、漫画やアニメを活用した若者層への働きかけといった取り組みもされています。これらは伝統工芸品の技術を守り、後世に伝えるための活動です。

伝統工芸を支えているのは職人だけではなかった

しかし、伝統工芸を支えているのは職人だけではありません。伝統工芸品を作る原材料の生産者、職人が使う道具を作る職人、人材育成にかかわる人々、研究者といったさまざまな人々がかかわり、受け継がれてきたものが伝統工芸です。

これら、伝統のモノづくりにかかわるすべての人たちを応援し、一般の伝統工芸ファンとつなげよう、というのがcasanellのクラウドファンディングです。コンセプトは、「想いをかさねる、出会いをかさねる、技術をかさねる」です。

casanellでは、「ちりつもプロジェクト」「チャレンジプロジェクト」と呼ばれる2つのプロジェクトで、伝統工芸品を作る職人と関係者を応援できます。ちりつもプロジェクトでは、伝統工芸品の原材料の生産者や人材育成にかかわる団体を、チャレンジプロジェクトでは、日本の伝統工芸に関係するプロジェクトのすべてを支援できます。

このクラウドファンディングは、プロジェクトを立ち上げる際の掲載が無料で、小規模プロジェクトから利用できるのも特徴です。伝統工芸というジャンルに特化していることから、立ち上げたプロジェクトが、ほかの多くのプロジェクトに埋もれてしまう心配もありません。

ただしその分、プロジェクトの内容がマニアックであったり、プロジェクトを立ち上げる人が少なかったり、といった弱点も持っています。プロジェクトを増やし、コアなファンだけでなく、どれだけライトな層まで届けられるのか、という課題をクリアしていく必要はありそうです。

このクラウドファンディングが広まることによって、伝統工芸品が人目に触れる機会も多くなります。ブランド力や発信力が弱い職人も、こういったサービスを利用することで自分の作品に新たな価値をつけ、ファンを増やすことができるでしょう。

新しい作品づくりの協力者になろう

今、新たな展開を求める伝統工芸が増加しています。日本の職人と世界のデザイナーが協力して生まれた工芸品を販売するセレクトショップが生まれたり、人気キャラクターとのコラボレーション商品を開発したり、モダンなデザインに一新したり、さらにペット用品として販売を始めたり、といったように、単に「お土産品」とするのではなく、攻めの姿勢を取る人や事業者が多くなってきています。

しかし、新しい作品を生み出す時には必ず資金が必要になります。その資金をどこから捻出するのか。大手企業であれば簡単に用意できる額の資金でも、個人事業主や中小企業の多い伝統工芸では難しいことがあります。

今後、casanellにプロジェクトが増えていけば、自分が応援している伝統工芸に対しても直接資金援助ができるかもしれません。クラウドファンディングを通じた支援によって、伝統工芸品作りの一端に自分も加わることができるのです。新たなステージへ進む伝統工芸を、クラウドファンディングで応援してみるのも面白いかもしれません。

 
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